2016年5月6日金曜日

平成二十八年春興帖 第八 (陽 美保子・石童庵・池田澄子・坂間恒子)



陽 美保子(「泉」同人)
青空に雪掲げゐる古巣かな
啓蟄の食ひ汚したる口ひとつ
雪割りの音に公案解けにけり



石童庵
幹にサルノコシカケさくら古木咲く
血脈を離れ法脈花は葉に
ふきのたう純愛なのにゲス呼ばはり



池田澄子
鬼は外外なら星も見えるでしょう
わたくしの髪が好きらし春一番
昇りゆく春の樹液のこころもち
前をゆく人の小声の歌も春
三鬼忌の猫が引っ掻く木の根っこ 
 


坂間恒子
菠薐草どこかで世界が裏返る
蕗の薹虚子の系譜のねむらない
蝮蛇草ほそるばかりの脊柱管