花尻万博褶曲は蒲公英入れず思い出す
木の国の電波の中を木の芽時
病無き四畳半の薊かな
桐の箱スイートピーも汝が為に
関根誠子(寒雷・や・つうの会・炎環)漕いで漕いで郵便配達夫は蝶に
春風やもう洟が出て洟が出て
咲くよりも散る花が好き旅が好き
夕がすみ果てしなくなる糸の先
散る桜あとはしいんとなる吉野
田中葉月川底のゆるゆる逃げる春愁
あのときのあなたでしたかアネモネは
石段の石の吐息は蓬色
喝采はサーカスの中 落椿
あれは夢だつたと言つてたんぽぽへ
仲 寒蟬風の出てそれらしくなる花馬酔木
春眠しいくつ電車を乗り換へても
我を見る春暮の鏡裏返す
他ならぬここが海市か大東京
マトリョーシカ最後に春の闇のこる
山本敏倖(豈・山河)きさらぎの外へ火宅の相聞歌
感触は陽炎ほどの甘味料
まっすぐに花の国境点描画
三月のあんばらんすのあんぶれら
一片の春の雪にもある重さ
小沢麻結薄紙に書かれし事件春灯下
永き日やむかし水母は骨を持ち
春の蠅丸ノ内線銀座駅