2016年8月12日金曜日

平成二十八年花鳥篇 第十 (花尻万博・水岩瞳・佐藤りえ・真矢ひろみ)



花尻万博
葱の花まどろみの中風聴けば
一人行く境まで羊歯若葉かな
干し蕨白々と刻を入れにけり
美しき岬蝶々新しや




水岩瞳
戦争に使はれし日々 花に問ふ
花の夜句集ひとつも残さずに
Kポップのひとり徴兵花は葉に



佐藤りえ
裏声の占星術師夏きざす
探偵は立つて新茶を飲み干せり
崖うへのゆすらをさはに欲しがりき
羽衣は天女の水着ひとへなる
マスタング路上駐車の青蛙



真矢ひろみ
磐座にブラックスワンかげろへり
空蝉をふるふ頻伽の高声かな
ビル路地の鵺と目が合ふ夏季講習