クンツァイト夏の巻
下坂速穂(「クンツァイト」「屋根」)籠枕象のはな子を夢に呼ぶ
住まずとも佃うれしき跣足かな
鶴折るを手が知つてゐる夜の秋
岬光世 (「クンツァイト」「翡翠」)冷し瓜あふるる水に足洗ひ
門のなき旧制高校夏の草
八月の高きへ梁を組みにけり
依光正樹 (「クンツァイト」主宰・「屋根」)端々に棘のありたる納涼かな
切つてみて声を挙げたるメロンかな
手渡しにして大きかり夏蜜柑
依光陽子 (「クンツァイト」「クプラス」「屋根」)あをぎりの裏なる光青揚羽
ペチュニアや食ふほどでなき魚をまた
人といふ人なつかしむ扇かな