ふけとしこ夜を啼く鴉に星の流れけり
邯鄲に酔の足らざる耳貸して
蚯蚓鳴く石鹸に薔薇彫り出せば
山本敏倖(豈・山河代表)水打って路地を切り絵の江戸にする
空蟬になる瞬間の点火音
まぜらんとまーまれーどとまんぼうと
隣人は銀河の向う一の矢放つ
人間白書鏡の中は蟲の闇
鰯雲話の続きは注射する
鬼やんま旅していたり嵯峨野まで
切り株の中心にある霧の音
林雅樹(澤)蚊遣火や怪談「勃起する死体」
デモ隊に神の小便たる夕立
エロ本自販機アルミ透けくる夏の暮
ダビデ像まねて逮捕や法師蝉
義父の目の追ひ来る白膠木紅葉かな
路上にて別れ話や夜学の灯
望月士郎コインロッカーの中ひとつずつ蛇の衣
しろさるすべり町が私を忘れてた
夜店の灯覗く少年セルロイド
たそがれて鬼灯市の妊るよ
無口な奴だな西瓜切ってやる
虫の闇ぽつんとベッド浮かべてる
夜は小声の黒衣がいます曼珠沙華
逆上がりもう一度して蛇穴へ