岡田一実 (「らん」同人)無花果を剥けば色よき末世かな
喉に沿ひ食道に沿ひ水澄めり
シナプスに脳照る如くちちろ鳴く
中村猛虎(なかむらたけとら1961年兵庫県生まれ。「姫路風羅堂第12世」現代俳句協会会員。)横断歩道白だけ行けば秋になる
先生の女に戻る秋の夕
稲光段々瓦礫になっていく
大阪や鱧よりほかはあらしまへん
香水の喧嘩している神谷バー
下腹部のそこが癌です水中花
佐藤りえうつしゑの方の此の世の遠花火
生物の涙の味のするきやべつ
仁丹の看板立たす夏野かな
展翅版百度に余熱爽やかに
沓脱の下の奈落の泥だんご
前北かおる蕊の根に留まる五弁や紅蜀葵
白焦げに落蝉の腹なりしかな
向日葵や空のビニールハウスあり
赤とんぼ畑に仕事なかりけり
銘板に土橋とばかり早稲の秋
焼却炉電話ボックス花カンナ
石段に居並ぶ諸尊竹の春