2016年10月21日金曜日

平成二十八年 合併夏・秋興帖 第七  (岡田一実・中村猛虎・佐藤りえ・前北かおる)



岡田一実 (「らん」同人)
無花果を剥けば色よき末世かな
喉に沿ひ食道に沿ひ水澄めり
シナプスに脳照る如くちちろ鳴く



中村猛虎(なかむらたけとら1961年兵庫県生まれ。「姫路風羅堂第12世」現代俳句協会会員。)
横断歩道白だけ行けば秋になる
先生の女に戻る秋の夕
稲光段々瓦礫になっていく
大阪や鱧よりほかはあらしまへん
香水の喧嘩している神谷バー
下腹部のそこが癌です水中花




佐藤りえ
うつしゑの方の此の世の遠花火
生物の涙の味のするきやべつ
仁丹の看板立たす夏野かな
展翅版百度に余熱爽やかに
沓脱の下の奈落の泥だんご




前北かおる
蕊の根に留まる五弁や紅蜀葵
白焦げに落蝉の腹なりしかな
向日葵や空のビニールハウスあり
赤とんぼ畑に仕事なかりけり
銘板に土橋とばかり早稲の秋
焼却炉電話ボックス花カンナ
石段に居並ぶ諸尊竹の春