2016年11月11日金曜日

平成二十八年 合併夏・秋興帖 第十 (下坂速穂・岬光世・依光正樹・依光陽子)



下坂速穂(「クンツァイト」「屋根」)
詩に痩せることなくけふの秋風に
目明しの老いて灯下に親しめる
草草の手に触れたがる子規忌かな




岬光世 (「クンツァイト」「翡翠」)
さしあたりゑのころ草に逃げ込みぬ
居留地や黄落といふ懺悔室
夜の水に茎のしたたか破蓮




依光正樹 (「クンツァイト」主宰・「屋根」)
人出でて露けき朝と思ひけり
もの言ひて少しく間あり蝶の秋
鬼灯や子守女が吹くかの音も




依光陽子 (「クンツァイト」「クプラス」「屋根」)
秋蒔や昼過ぎの部屋背負ひたる
先んじて枯れゆく花も秋の花
風景が蝶のみこんで秋深む