2016年11月4日金曜日

平成二十八年 合併夏・秋興帖 第九  堀本吟



堀本 吟
 
夏港あくびおおきく猫娘
白雨や走るおとうとといもうとが
水引の花ぶつぶつと亡父が呼ぶ
名月や古刹の庭にパイプ椅子
ふたつなき命澄みたる月夜かな
明けの夢火をつかみたし手づかむる
引きこもり津波退くとき汝れも逝きし
せつじつにもの頼むことあらばこそ
釣舟草とおいところに咲いている
釣舟草見えずなくなる目をこらす
めつむると見えずなりけり釣舟草
釣舟草妖しの水辺荒るるまま
おもてなしこのひと怪しなんでも食う