2017年1月6日金曜日

平成二十八年 冬興帖 第三 (杉山久子・曾根毅・衛藤夏子・前北かおる・山本敏倖・望月士郎)





杉山久子
話し出せばたちまち雪となる言葉
わらわらと視察団全員マスク
クリックの果ては地獄よ霜の花



曾根毅
冬に入る衝動買いのマングース
能舞台より現れし雪の果
目礼や霞む林檎を掌に受けて



衛藤夏子(船団の会)
魚可岸やゆらりゆらりと冬の月
綿虫と語りたい夜青い夜
サイフォンの朝の香や冬に入る




前北かおる(夏潮)
ストーブやドコモの電波入ります
ストーブや明日の富士に太鼓判
山小屋のストーブ燃ゆる寝静まる



山本敏倖 (山河代表・豈)  
紙飛行機の年末はうしろからピカソ
なまこなまこ法的処置を講じます
平熱の裸木折れる堕胎音
こんにゃく玉はとてもずるくて貴公子
白線の火事騒ぎから離陸する



望月士郎
どんよりと鮟鱇垂れて指さして
冬の葬うさぎのみみの血脈の
マスクから出ている目玉たちメトロ
モデルハウスに林檎の皮の垂れてゆく
風花の背中ななめに哀しんで