2016年12月30日金曜日

平成二十八年 冬興帖 第二 (小野裕三・ふけとしこ・岡田由季・仙田洋子・五島高資・林雅樹)





小野裕三(海程・豆の木)
肖像画ばかり大西洋に月の雨
雨脚やがて州都貫くハロウィン
冬浅し大聖堂に雨の構造
寒北斗斉唱果てるスタジアム
異国語の囁き寒夜の川面を渡る




ふけとしこ
冬の日へ糸巻海星が身を開く
唐突に膨らむ記憶竜の玉
馬は栗毛冬空に傷も無き




岡田由季
冬至の日塾からどつと子等の出て
病棟の申し送りに雪しづる
ポインセチアフォルテッシモで終はる曲




仙田洋子
雪女郎抱きしめられて雪になる
綿虫を追ひ命日をふらふらと
命日の地上をきよめ花八手
もてあます若さ冬木を打ちにけり
冬満月なら抱きしめていてあげる
極道の眼して白鳥あらそへる
狼の命日しんと晴れわたり




五島高資
灘の凪ぐ盤渉調や琵琶の聲
潮の目に冬の日の入る相模かな
冬霧に浮く燈火や宇都宮
夕星のかかる五百枝や神迎へ
夕闇の満ち来る銀杏落葉かな
頬杖に月の盈ちゆくレノンの忌
坂を下り坂に出でたる漱石忌




林雅樹 (「澤」)
目貼してあつてもそれは入つて来る
直腸に海鼠を隠し入国す
女生徒に暦売させ売春も
冬木立顔をあげたらおかまだつた
鼻糞を鼻に戻して冬籠