仙田洋子初晴や引つかき傷のやうに鳥
なつかしき人と分け合ふごまめかな
戒名はいらぬと父の初日記
獅子舞の恥ぢらふやうに退りけり
押し合ふもこの世のならひ初戎
鏡割星の生まるる方を向き
餅花の匂ふがごとく揺れにけり
ふけとしこ七日粥献血年齢すでに過ぎ
雪折れの枝よづきづき痛むだらう
梟が面付け替へてゐるところ
五島高資日を入れる船溜りかな初昔
淑気満つ宇津保舟なる月の影
金星へ抜ける道あり鬼火焚
堀本 吟
歳旦三物歳旦の大河こよなき景色かな
愛(めぐ)しき春着橋の殷賑
夢に遭ふ蝶をわが身と呼ばすらん
渕上信子
短句(有季定形)万年床にひとり鶏旦
二日隣家の犬に挨拶
三日の船に男逞し
「春駒」は書初をはみ出し
五日はや普通の顔ばかり