2017年3月3日金曜日

平成二十九年 歳旦帖 第三 (杉山久子・田中葉月・石童庵・真矢ひろみ・ 竹岡一郎)



杉山久子
ぼんやりと猫の耳ある初写真
饅頭の黄粉飛び散る初句会
アマゾンの倉庫を出づる初荷かな


田中葉月
数の子を噛む子の音の大人びて
脇役に甘んじてをりごまめのめ
万両の一段高きに御座しけり
笹鳴きの小さき石にも日の当たれ
もういいかいまあだあだよう福寿草


石童庵
初みくじ開く最中のおまけなり
産土で買ひて小吉初みくじ
二日早や三つ目のおみくじを引く
四つ目を引いて凶なり初みくじ
やつと意に叶ふ五枚目初みくじ


真矢ひろみ
ぽっぺんのぽこの悦楽ぺんの闇
いっそ乗ってしまうか初湯のうつろ舟
五里霧中ですから淑気逆もそう



竹岡一郎
寒紅の眠りに家のほどけゆく
祀らるるためかまくらに入る老女
かまくらを囲む顔色あをい奴等
かまくらがきりなく呑んでめのこたち
かまくらを出るが不良のはじめ也
この夜の木霊うましと寒紅さす