2017年6月30日金曜日

平成二十九年 花鳥篇 第一(仙田洋子・大井恒行・北川美美・早瀬恵子・杉山久子・曾根 毅・坂間恒子)



仙田洋子
みどりごにさくらさくらとささやきぬ
春の鹿きれいな人の傍らに
オルゴールに蝶を隠すといふ快楽
春灯や大きくなりし子の匂ひ
もそつと近うもそつと近う蟾蜍
螢袋からちよつとだけ顔を出す
噴水を水のびつくり箱と思ふ


大井恒行
鳥を生みし空の蒼さや花空木
青葉潮に降る雨さみしさみしがる
日焼け子のかの面影や髪ゆたか


北川美美
菜の花と一緒に茹でるスパゲッティ
花の夜のTV画面も桜色
わたくしもしばらくここに花に鳥


早瀬恵子(同人誌「豈」) 
アイリスの髪ゆたかなるミュシャ・カフェ
ロボットのふりする肉球アイ・ラブ・サマー
はからいの唐破風なりあじさいも


杉山久子
花の闇猫のからだとまじり合ふ
五月来る鳩のふるへの地に満ちて
鉄の輪をくぐりアマリリスに屈む


曾根 毅
眠そうな蜆の影を見ておりぬ
恥骨まで轟き渡り薪能
雨音か瀬音か我か五月闇


坂間恒子
花種を蒔く手をあげる影法師
白藤に少年のジャンプとどかざり
白藤や遣欧使節ひかりあう