下坂速穂(「クンツァイト」「秀」)うみどりの白はた黒や火恋し
露の世の誰が棲む路地のつきあたり
烏瓜はたしてありぬ呼んでゐる
岬光世(「クンツァイト」「翡翠」)へびうりの垂れて口先をさまらず
等距離に帽子の過ぎる体育の日
秋の蚊帳を吊る平成の月日かな
依光正樹 (「クンツァイト」主宰)千代紙もほとりに置きて瓜の馬
茶を飲んで会ふ人もなき生身魂
手向けたる花に朱のあり墓参り
新しきビールが出でて秋の風
依光陽子(「クンツァイト」)雀へととんで雀や草の秋
獅子殿の獅子をくぐれば芒原
百の白馬が築地に跳んで秋の雨
末枯れて雀は貌を上げにけり
ふけとしこ烏瓜龍の産みたる卵かも
龍淵に潜むドローンの墜落す
レリーフの十二星座図冬近し
浅沼 璞台風にサイレンの去る机かな
冬どなり革靴が痛くてあるく
行く星の君絶えずして吉祥寺