中村猛虎(なかむらたけとら)寒紅を引きて整う死化粧
遺骨より白き骨壷冬の星
葬りし人の布団を今日も敷く
木枯らしの底に透明な柩
冬ざれの遺骨に別れ花の色
極月や人焼く時の匂いして
青鮫の四十九日の宙を行く
小野裕三(海程・豆の木)陽の射して妻の本棚冬眠のよう
大いなる遊びのごとく柚子湯かな
毛布へと絡まりながら寝る兄弟
山本敏倖(山河・豈)次世代へ何を語るか木守柿
雪ほたる祝辞のようにらせん描く
冬銀河一粒は今頬を伝う
粉雪の向うはしかし鬼の童話
椿屋実梛タクシーが停まってくれぬ寒夜かな
それぞれの孤独の吹雪く純喫茶
煮凝や言語化しない憂さのあり
水岩瞳短日やあれこれそれとまだどれも
口じゆうに麦門冬湯ちやんちやんこ
冬眠すると言ひて少年口閉ざす
フレームの花の生涯外は雨
コイン占ひ裏は表へ寒明忌
近江文代山眠る結束バンドに柔軟性
他人めく妻の片顔焚火濃し
手袋の右と左に持つロープ
温室の花の高さで物を言う
鴨南蛮セーターの袖長くあり
真空の餅真空のままでいる
首長く吊られて鴨よ華人街