2018年2月23日金曜日

平成二十九年 冬興帖 第七(岬光世・依光正樹・依光陽子・加藤知子・関悦史・小林かんな)



岬光世(「クンツァイト」「翡翠」)
寒稽古見えぬ巌の胸を突く
真直ぐに立つ裸木の山法師
餅搗の手をつやつやと見せ合うて


依光正樹(「クンツァイト」主宰)
手を握るそして離すや冬はじめ
生きて世に冷たき菓子も楽しかり
なつかしく並び歩きし冬木かな
泥の影すぐ日に揚がる池普請


依光陽子(「クンツァイト」)
ひとびとの影かからずや寒牡丹
寒牡丹菰に洩れ日のなかりけり
侘助やことばを交はしたる如く
餅花の乾びて透くる日数かな


加藤知子
たらようの実は熟れ自裁自死の報
落ち椿あのよこのよと踊りつつ
AIの場所によっては雪か雨


関悦史
ヒポクラテス顔貌で来る冬ならむ
何ものか大笑ひして冬の暮
一月の身は木星の如くあり
初雪は一歳児らを知覚せり
月蝕のさなかの飢ゑと寒さかな
自殺法ネット検索して冬晴
老い縮む国なり冬のスーパーも


小林かんな
マスクして南瓜の異形見にゆかむ
寒茜八坂倶楽部に袖を振る
広辞苑雪は足りないかもしれぬ
解熱剤すでに梟青みたる
くり返す律動金魚冬銀河