近江文代くちびるを薄くレタスを裂いている
遠く来て磯巾着の縞模様
遺影とは三色菫咲くところ
片方の足組んでいる藤の昼
発音の途中浅蜊の口開く
渕上信子連翹よりも山吹の濃し
百千鳥花殻摘に倦み
花過の月細りゆく日々
もやしの髭根とる夫に蝶
昭和の日安楽死の話
夕ひばり黒点となるまで
春をかなしむ家持のごと
花尻万博桜貝いちいち波に応へ照る
浸す足持たぬ仏に水温む
何もかも子らに任せる桜烏賊
牛の声鬼の声草摘みにけり
花疲見ている沖の光かな
浅沼璞時の門ぬければ石だたみ芽吹く
実朝の石の烏帽子の風光る
看板に春雨 東京流れ者
五島高資沈みたる島と繋がる磯焚火
永日や手のひらに手のひらを置く
方丈の岩屋に空や雪解水
雛の間や川は夕べへ流れけり
右大臣の烏帽子を直す雛の朝
蹲へば雲母さざめく正御影供