2018年6月22日金曜日

平成三十年 花鳥篇 第一(仙田洋子・辻村麻乃・松下カロ・曾根 毅)



仙田洋子
春闌けて絶滅近き鳥けもの
春愁や目覚めてもホモ・サピエンス
花は葉に昭和遠のくばかりかな
武蔵野の浮巣に座りたくなりぬ
鵜の眼死者悼むごとぼんやりと
どくだみのびつしりよもつひらさかは
音もなく三途の川のあめんばう


辻村麻乃
一斉にダムに飛び立つ夏燕
蛇苺摘みて少女のいなくなり
降る前の空の暗さよ草いきれ
辞儀する牡丹の下の牡丹かな
お向かひのマダムの窓のゼラニューム
空豆が一粒置かれし母の部屋
羽ばたきて揚羽溺れてゐたりけり


松下カロ
たんぽぽを吹いて平気で嘘をつく
卒然と箱庭の川途切れけり
あぢさゐの刺青は乳房におよび


曾根 毅
澄みきっている春水の傷口めく
一瞬の蝶の曳きたる無重力
山の端に髪を束ねし水遊び