2018年7月6日金曜日

平成三十年 花鳥篇 第三(坂間恒子・網野月を・渕上信子・田中葉月・山本敏倖・原雅子)



坂間恒子
葱坊主真昼の寂しさに磁力
柏餅テトラポッドの女体めく
減塩・全粥母の日の母あかるくす
褄黒豹紋蝶三途の河を渡りくる
百頭の蝶のまつわる母の部屋


網野月を
風なぶる髭もうじきに関帝祭
五月闇とれた釦を付けてをり
貌照らすスマホの明り五月闇
小満や松竹錠をへの六へ
バラ優し自分の匂いの好きな子は
この頃の傘はパステル桜桃忌
寅さんの軽きボストンかたつむり
 

渕上信子
愁ひ貌なる春のAI
はこねうつぎのまだ白き頃
巨星落つ五月号立読み
こゑ張上ぐる日雀小さし
立てば尺蠖座れば釦
水着廃止のミスコンテスト
動く歩道を走る香水


田中葉月
てふてふのそのてふてふのかくれんぼ
勾玉ものびをするらし茅花風
繭ほどをつみかさねつつ生きてをり
ほらもつと見てゐてほしい額の花
くちべたでたぶんぶきよう釣鐘草
北斎の波より奇なり花卯木
万緑や走る教師の夢途中
父の日やそろそろ父の顔をぬぎ
言の葉の茂みより出づ三光鳥


山本 敏倖(豈・山河)
宙返る江戸の匂いの鉄線花
寸法は蜘蛛の囲ほどの叫びかな
劇薬の劇中劇や濃あじさい
薄墨の空間を経て緋鯉行く
玄室の象形文字を辿る蟻


原雅子
見えてから遠き灯台草萌ゆる
浮島やほのぼの雀隠れなる
ふるき佳きあめりかあめりかはなみづき
いくばくか力まだあり山青む
春祭まづ神官がつまづいて