2018年7月20日金曜日

平成三十年 花鳥篇 第五(前北かおる・望月士郎・林雅樹・下坂速穂)



前北かおる(夏潮)
遠足の金平糖の大袋
遠足や空を仰ぐに芝に寝て
塗りたての大吊橋や谷若葉


望月士郎
桐の花わたくし雨とあなたの雨
蛍狩しらない妹ついてくる
鳥のいるページめくると白雨の街
はんざきの半分もらってくれという
射的場の人形ひとつ落ち夜汽車
みみなしやま風鈴売の振り返る
髪洗う指にこの世の頭蓋骨


林雅樹
塀の上の鉄条網や夕桜
囀や質屋の飾窓に真珠
永き日の女相撲に暮れにけり
桜蕊降るや弓道場無人
張られたる田水光るや闇の中
カンテラの近づいて来る時鳥
葉桜の窓に光れる抜歯かな


下坂速穂(「クンツァイト」「秀」)
魚の水脈鳥の水輪や更衣
蓮咲いて明日の吾をうつす水
その母に聞く友の死よつばくらめ