2018年7月27日金曜日

平成三十年 花鳥篇 第六(岬光世・依光正樹・依光陽子・近江文代)



岬光世(「クンツァイト」「翡翠」)
人のゐて人住まぬ島栗の花
捩花や蝶は惑はぬ迷ひ道
夜の更けていよよ淡きは仏桑花


依光正樹(「クンツァイト」主宰)
草ともにそよぐがありて著莪の花
水使ふ音のかそかや額の花
額の花よく根がついてうつくしく
ゆく鳥に花を摘みたる女かな


依光陽子(「クンツァイト」)
野のものに弔ひもなし杉菜生ふ
彼方より低く来る蜂かきどほし
尋ぬるに番地が頼り花水木
朝顔の苗に蛇口をひねる頃


近江文代
サボテンを切れば昨夜の水滲む
芍薬の光の束を信頼す
金魚得て水の膨らむ夜であり
某日を人を焼くように繭を煮る
生きている十本の爪青山椒