岸本尚毅どの店の煙ともなく梅雨の路地
店の中あちこち眺め麦酒のむ
蚊喰鳥後生鰻の水深し
世紀末過ぎて久しき昼寝かな
眉と髯こぞりめでたき裸かな
南瓜抱く夕焼村の村長は
昼顔が遠く咲くのみ昼休
渡邊美保ボール蹴る少年老いて花は葉に
賞品は白詰草の首飾り
曳航の後の高波夏燕
神谷 波つれだつてつつじを越える揚羽と揚羽
昨日ほととぎす今日鶯の主張
気兼ねなく十薬群れる日陰かな
あぢさゐの「あ」のいきいきと濡れてゐる
木村オサム夏蝶来君に寝癖がある限り
潮まねき波打ち際の音たわむ
文字のなき砂漠の上を紙魚走る
町内に虎いる気配大西日
許されたつもりまくなぎついて来る
堀本吟神功皇后陵
亀石や亀の祖先と鳴いてみた
蜂飛んで来るも高くもない鼻に
はんかちを線対称にわかつ蟻
白砂に倦み巌磐井石清水
神功皇后陵ある村や立葵
内村恭子ゴンドラの櫂の音響く夏館
夏潮や波音に消ゆ「タジゥ」の声
パラソルはいつも青白縞模様
夕星を待つ中庭の噴水に
衣擦れと甘き音楽夏至の夜の