2018年7月13日金曜日

平成三十年 花鳥篇 第四(岸本尚毅・渡邊美保・神谷 波・木村オサム・堀本吟・内村恭子)



岸本尚毅
どの店の煙ともなく梅雨の路地
店の中あちこち眺め麦酒のむ
蚊喰鳥後生鰻の水深し
世紀末過ぎて久しき昼寝かな
眉と髯こぞりめでたき裸かな
南瓜抱く夕焼村の村長は
昼顔が遠く咲くのみ昼休


渡邊美保
ボール蹴る少年老いて花は葉に
賞品は白詰草の首飾り
曳航の後の高波夏燕


神谷 波
つれだつてつつじを越える揚羽と揚羽
昨日ほととぎす今日鶯の主張
気兼ねなく十薬群れる日陰かな
あぢさゐの「あ」のいきいきと濡れてゐる


木村オサム
夏蝶来君に寝癖がある限り
潮まねき波打ち際の音たわむ
文字のなき砂漠の上を紙魚走る
町内に虎いる気配大西日
許されたつもりまくなぎついて来る


堀本吟
神功皇后陵
亀石や亀の祖先と鳴いてみた
蜂飛んで来るも高くもない鼻に
はんかちを線対称にわかつ蟻
白砂に倦み巌磐井石清水
神功皇后陵ある村や立葵


内村恭子
ゴンドラの櫂の音響く夏館
夏潮や波音に消ゆ「タジゥ」の声
パラソルはいつも青白縞模様
夕星を待つ中庭の噴水に
衣擦れと甘き音楽夏至の夜の