大井恒行攝津忌の褪せぬは赤き水木の実
夜の柿朝の柿目に見えてけり
捨聖ついに参らず父母の墓
辻村麻乃呪ひ
芒から金髪美女の現るる
補陀落を要らぬと言ひし野菊かな
呪ひたる脚から揃ふ星月夜
列車いま見知らぬ秋を通過せり
秋耕を過ぎた辺りの日暮かな
秋雨でびしょ濡れグランドに少年
一心に窓拭く女秋曇
仲寒蟬貧血の足を引き抜く残暑かな
馬追の鳴かぬといふはすなはち死
天体のにほひをさせて草の絮
二つある腎臓さびし秋の水
麓から順に灯ともす葛の村
雨月なり尻を豊かに畑のもの
横丁に仏師棲みけり雁来紅
木村オサムトルソーに頭の生える大花野
桃を食ふ遠き波音聴くために
ひもすがら案山子になって過ごす会
ルービックキューブピカソが林檎描いたなら
前世との軽い約束烏瓜