2018年11月2日金曜日

平成三十年 秋興帖 第二(大井恒行・辻村麻乃・仲寒蟬・木村オサム)



大井恒行
攝津忌の褪せぬは赤き水木の実
夜の柿朝の柿目に見えてけり
捨聖ついに参らず父母の墓


辻村麻乃
呪ひ
芒から金髪美女の現るる
補陀落を要らぬと言ひし野菊かな
呪ひたる脚から揃ふ星月夜
列車いま見知らぬ秋を通過せり
秋耕を過ぎた辺りの日暮かな
秋雨でびしょ濡れグランドに少年
一心に窓拭く女秋曇


仲寒蟬
貧血の足を引き抜く残暑かな
馬追の鳴かぬといふはすなはち死
天体のにほひをさせて草の絮
二つある腎臓さびし秋の水
麓から順に灯ともす葛の村
雨月なり尻を豊かに畑のもの
横丁に仏師棲みけり雁来紅


木村オサム
トルソーに頭の生える大花野
桃を食ふ遠き波音聴くために
ひもすがら案山子になって過ごす会
ルービックキューブピカソが林檎描いたなら
前世との軽い約束烏瓜