田中葉月音楽室くるり出て行く処暑の猫
この秋思約分すればオンザロック
水底に火の匂ひ秋の響灘
陽気すぎる空につまづく鰯雲
桔梗の方向おんちヒトオンチ
網野月を小春日や間延びしている踏切音
陽の赤い家族日和の大花野
目を閉じ深く吸う白い風日和
中庭の子らの歓声そぞろ寒
もも売りの達筆一函參千円
三十年年上女房の冬帽子
蛇笏忌や虫歯のいない甲斐の国
堀本吟ツユクサ
立秋や底から濁る湖の水
石像を胡散臭しと鰯雲
秋風裡さらさらとヘアアーチスト
前北かおる(夏潮)新米の担ぎこまれし三和土かな
コンバイン操る写真今年米
箸置に箸を揃へて今年米
乾 草川星光を蔵して桃の眠りゆく
鉦叩前頭葉を酒が攻む
笑ひつつ花野を神は発つだらう
抽斗に流星飼ふてゐる歩荷
新藁の香が境界父の国
ショパン火に焼べては秋のビールかな
釣瓶落し翁恋ひしと石の哭く