2018年11月16日金曜日

平成三十年 秋興帖 第四(坂間恒子・林雅樹・渕上信子・渡邉美保・小野裕三)



坂間恒子
マリー・アントワネット立ちたる鶏頭花
マリリン・モンローのくちびる牽牛花
秋冷のダリア素戔嗚尊かな


林雅樹
柘榴実るバス終点の住宅地
捕へたる蜻蛉や己が尻を噛み
秋桜や獣医学科の庭に犬
金髪の菊人形やじつは死体
肛門に杭突つこまれ案山子にされ


渕上信子
おかしくなつてゆく鰯雲
英語で自慢秋の富士山
塵置場まんじゆさげ満開
団栗よりも薬ころころ
黄落きれい句碑の句は駄句
腰掛けるには茸小さし
霧の匂ひをまとひ「ただいま・・・」


渡邉美保
ひやひやと医師に耳奥照らされて
きつねのかみそり傍らに案山子立つ
お地蔵の紅塗り直す十三夜


小野裕三
蟋蟀の夜の力で鳴きにけり
諦めた色ありそうな曼珠沙華
勇ましき声も混じって赤い羽根
秋晴れに大きく立ちて修理工
蚤の市に漫画全巻鳥渡る