2019年2月8日金曜日

平成三十年 冬興帖 第五(下坂速穂・岬光世・依光正樹・依光陽子・渕上信子)



下坂速穂(「クンツァイト」「秀」)
子規の来しあたりや冬のあたたかく
クリスマスソング喧し飯旨し
冬の木や柄長集めるうれしさに


岬光世 (「クンツァイト」「翡翠」)
雪吊と短き枝の在り処
ふくらみの寒木瓜めきぬ密やかに
人来れば綺麗に座る雪見かな


依光正樹 (「クンツァイト」主宰)
帯解や人を閉して硝子窓
あつまつてひとつの花を日短か
慕はれてもう夕方や落葉掻
群雀群れとほしてや冬ざるる


依光陽子 (「クンツァイト」)
焚き上げの櫓に年の釘を打つ
門松の一度据ゑしを寝かせたる
千両や鍵かけて戸に隙間出来
透明な影を遊ばせ路地の冬


渕上信子
初時雨はや喪中葉書か
蟷螂みどり冬のベランダ
聖しこの夜首輪瞬き
鱈場蟹いえ「ほぼタラバガニ」
忘年会よ春歌でをはれ
マスクのひとの耳尖りゆく
朝床に聞く雪掻のこゑ