坂間恒子もっと奧は樹氷林なり初詣
初夢やボタンがひとつ波打ち際
初夢に「地獄の門」のあらわれる
田中葉月福寿草ほんの小さなでき事に
蓬莱やひこうき雲の広ごりて
転生の白いカラスが窓叩く
仏の座ほんのつまらぬものですが
裸木ややはり帰つていくんだね
木村オサム遠い地球操縦席に鏡餅
福助を空へ向けたるお元日
おほかたは使われぬ脳寝正月
初景色猿がぽつんと土手に立つ
なんとなくいるだけのひと福寿草
乾 草川なつかしや薺打ちゐる父の家
卒論は「出エジプト記」寒卵
パスカルが呼ぶから枯野越えてゆく
薄氷や子の好きだつた銀食器
煮凝りの闇「馬車道」へ「馬車道」へ
島の春小さな穴へ落ちぬよう
冬枯れや昼餉の箸をパキと割り