2019年4月19日金曜日

平成三十一年 歳旦帖 第六(下坂速穂・岬光世・依光正樹・依光陽子)



下坂速穂(「クンツァイト」「秀」)
めくりてもめくりても海初暦
初場所や江戸に大火のありしころ
親指の太く大きく初仕事


岬光世(「クンツァイト」「翡翠」)
近況も知らずなりたる賀状かな
七日なり清白の丈つつましく
みやげ買ふ繭玉揺るる先なれば


依光正樹(「クンツァイト」主宰)
去年のこと引き摺つてゐる春著かな
古きこといつまで好きや鳥総松
初場所や裏道ゆけど大通り
いろいろな社を踏みて寒詣


依光陽子(「クンツァイト」)
散らしたる蕾を鈴や初鋏
元朝のかほの映れる蛇口かな
塵芥のをどりまろびや初箒
鶏旦や群青強きねずみもち