2019年7月12日金曜日

令和元年 春興帖 第八(内村恭子・林雅樹・神谷 波・北川美美・中村猛虎)



内村恭子
鳥のごと石油掘削機の春愁
パイプライン春の原野を貫きて
蜃気楼海上プラントの遥か
夕凪をタンカーのゆく遅日かな
タンクローリー銀色に風は春


林雅樹(澤)
恋猫や煌々として花やしき
回春の妙薬は砒素木瓜赤し
妾宅の猟奇殺人濃山吹
朧月屋形船にて乱交す
国道に馬牽く人や春の雲


神谷 波
たんぽぽの絮吹きをはり走り出す
宮殿の男手に手にチューリップ
用忘れ花に見とれる二階かな
さくら散る夜と昼とのあはひかな
改元初日うぐひすは普段通り


北川美美
春陰の臨月となる妃かな
魚屋が逗子駅前に桜海老
青山椒一合半の米を研ぐ


中村猛虎
意地悪なこの意地悪なチューリップ
靴裏の紅きヒールや夏燕
褒められる事なき齢鳥曇
骨壷の蓋開けている蛍の夜
残雪や賽の河原に石を積む