西村麒麟眠さうな中学校の桜かな
野球部の遠投を見る桜かな
紫のジャージの人が耕すや
先生の忌日に吹かん鶯笛
稀に出す手紙の返事春愁ひ
下坂速穂(「クンツァイト」「秀」)囀や今はしづかな祟り神
残る子と貰はれてゆく子猫かな
髪長き男が春を寒さうに
岬光世(「クンツァイト」「翡翠」)漁りの指を離れぬ春の潮
菜の花や浜には浜の屋台来て
かたはらの子は砂を掘り春の沖
依光正樹(「クンツァイト」主宰)門の中からしやぼん玉吹いてゐる
海風が出て春光が照りつけて
磯遊びビルばかり見し吾にうれし
草餅や潮の香りもどこからか