2019年8月30日金曜日

令和元年 花鳥篇 第二(杉山久子・渕上信子・夏木久)



杉山久子
白髪の美しき遺影や鳥雲に
木漏れ日の記憶匂へる夏帽子
終電に空ける予祝の缶ビール


渕上信子
老いうぐひすの物狂めき
蟻にあなたに雨の休日
兜太論茹小豆甘すぎ
被爆ピアノを聴く熱帯夜
夏帽子振向くや別人
夜食のあとの指舐めて「さて!」
歩み出す厄日の団子虫


夏木久
炎昼を影の干乾びゆくボレロ
顔役になれず朝顔朝茶漬
峰雲の麓総州九十九里
雨脚が伸びて曼陀羅図の小火へ
器より銀河へしずく水の星
向日葵の所属七三一部隊
王子さま忌の夜の飛行機雲へ