小沢麻結満月の更けて煌々春コート
スパイダークロスステッチ薔薇の午後
パン厚くバナナとラムの黒糖ジャム
井口時男鬣青く谷間の夏へいつさんに
夏蝶の影が貼りつく甃のうへ
炎帝と酌むガード下の昼酒
黒猫の眉間に発止(ハッシ)!夏星燦
海鞘ふとる海底ひそと動く夜も
水茄子や南鳥島風力3
岸本尚毅永き日の後のつめたき夜の闇
平成が逝き春が逝くパンを噛む
老鶯や莟大きく百合の供華
郁子若葉梅の支へ木巻きながら
昼顔の花と子供と鋏虫
玉子丼ほろほろ食うて桜桃忌
売つてゐる扇に透けて扇かな
仙田洋子口つぐむチェルノブイリの春の鳥
絶滅の近し近しと亀鳴けり
ちぎられし英字新聞鳥の巣に
べたべたと躑躅べたべたと妬みゐる
エビアンを飲み葉桜のざわざわと
相撲部の部室風鈴鳴りにけり
ウィンドサーフィン水平線のまだ遙か