水岩瞳花種を蒔きて明日が信じらる
丸盆に干菓子なけれど新茶かな
強がつてみて雨ボート裏返す
中元はいつも花染め三輪素麺
ものごとの価値の変遷バナナかな
菊池洋勝風青し背を向けている握り飯
自販機を開けたる鍵や風薫る
通院の予約の日かな青葉雨
下ろしたら戻せぬ箱や夏の初め
手習いの新元号や夏来る
紫陽花や会釈を返す対向車
絵日記の余る頁や夏休
内橋可奈子(夜守派)今日を終え冷蔵庫から角砂糖
春はるよ張られて腹を触られて
蝶蝶はすてき保護者も来るけれど
それみんな放下してもうすぐ夏休
カキゴオリ刺さらぬ白い白い匙
犬と猫いっしょに走る万緑へ
高橋美弥子(夜守派)朝ざくら一膳ほどの粥炊けり
褥瘡の軟膏匂ふ日のさくら
自傷痕の微熱あかあか桜散る
火取虫ネイルのラメの飛び散りぬ
夜間飛行フットレストの跣なり
川嶋健佑(つくえの部屋、夜守派)万緑の牛を林道へと放つ
トンネルは滴るところどころから
絶望の底で蹴伸びをして泳ぐ
葡萄狩る八時を五分過ぎるごと
夜の秋の砂漠に自動販売機