2020年3月6日金曜日

令和二年 歳旦帖 第九(下坂速穂・岬光世・依光正樹・依光陽子・のどか・水岩瞳)



下坂速穂
初便りにはお互ひの母のこと
店子いつ入れ替はりたる飾かな
どんど焚くけむりは蘆花の旧居へと


岬光世
飾取る品川宿を後にして
小正月過ぎて売約済の花
帯留を愛でてもらひし女正月


依光正樹
花街あり焚火をぢつと見つめたる
露地の人しやがんで立つて年詰まる
亡き人と冬あたたかき手拭屋
侘助や露地の途中に店があり


依光陽子
のし餅のうんと言はする厚みかな
枝撥ねて一鳥枝に淑気かな
鳥のほか父母のゐる御慶かな
かめむしの白き半分寒暮かな


のどか
大氷柱風のおらびを閉ぢ込めて
軒氷柱の雫となるや星の声
バラライカウォッカに氷柱つき立てて


水岩瞳
雑の句を集めて久し師走かな
大安で締め括りけり古暦
初日記また書いてゐる今年こそ
初詣いつもの神社いつも吉
読初の一書「ポピュリズムの功罪」