俳句新空間俳句帖
スクロールしてみる俳句巻子本。 年二回、媒体誌『俳句新空間』に転載。 SINCE 2012(平成24).12.28.
2020年3月27日金曜日
令和二年 春興帖 第二(五島高資・松下カロ・辻村麻乃)
五島高資
羚羊と目の合ふ時つ風光る
春の風邪ナツメ球の灯目に刺さる
牡丹雪湯の沸く音の中にをり
龍天に登りし松の馨りかな
目を閉ぢて春の入り日となりにけり
松下カロ
父の足さがし続けて春炬燵
息をもて銀器曇らす鶴帰る
春炬燵遠く多産の国があり
辻村麻乃
ビル街の古りて社に淡き梅
白加賀の雄蕊を風の撫で回す
これからと連呼する人梅見かな
枝ぶりを褒めて梅見の車椅子
探梅や口を開けたる老婦人
ぷつぷつと蜆先刻の息を吐く
クロッカスはち切れさうな犬連れて
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