2020年3月20日金曜日

令和二年 春興帖 第一(仙田洋子・曾根 毅・夏木久)



仙田洋子
春の鹿地軸のやうに傾けり
超新星爆発無音梅白し
梅白しわが細胞も新しく
雛人形みな正面を向く怖さ
カルメンの踏みつけてゆく落椿
影あれば影に佇み桜かな
永遠を追ひかけ雲雀揚がりけり


曾根 毅
瓦礫より赤い毛布を掴み出す
死んだ人らの拍手のようにかぎろい
春めくや坂の時間が長くなり


夏木久
春立ちて入るか出るかの手がノブに
コンタクトその涙目を鳥帰る
行旅死の百円ライター春燈
立春や隙間に水を流し込み
永眠は家出するやう大人しく
箸置きに山背のこと大和のこと
ノートには戯画も寺もの記憶あり