花尻万博蜷の道昼長々とありにけり
花降りて沼として薄まれる
浜風と背中を反らす花の中
木の国の鳥居の次の桜となり
半身に花を頂きイノブタらは
我儘に泣かされている昼の蝶
竹岡一郎疫の春腹話術師の舌の赤
黄砂に紛れこはい寝首を搔くめえか
啓蟄や疫や正義や魔女狩や
「死すべきは死す」と逆打ち遍路這ふ
教室空つぽ恋猫さかり放題
疫神おぼろ首都マンホール次々跳ね
もともと死霊の息吸ふ我ら花万朶
中山奈々蜥蜴が出てきた世界そのものがバベルの塔だつた
疫病の塔や春燈より崩れ
新聞の日に日に薄し花のあと
誰彼と保有の黄砂降りにけり
服をみな紫とせよ鐘おぼろ
どの国の言語で死者数を伝へやうかとすみれを踏む
北川美美永き日の窓側に置く電波時計
花粉症湿り気のある黒土かな
春の夜の我は豆腐を抜けてゆく
大関博美LEDランプにレタス盛りなり
悪女とはなれぬ青春シクラメン
どこからの白タンポポやパン工房
小野裕三(海原・豆の木)亀あれば鼓膜の奥で鳴きにけり
寄居虫の散文的な歩みかな
数式を究めし学長花ミモザ
糸遊の丘へと歩む安息日
肉体は眠り始めて豆の花