2020年6月5日金曜日

令和二年 花鳥篇 第三(松下カロ・花尻万博・堀本 吟・竹岡一郎)



松下カロ
おたまじやくし産湯の中で泣いてゐる
銀髪の少年少女修司の忌
家出したことがないから蟾蜍


花尻万博
葱の花追はるる遊びその果てに
表の無い後姿を狩る蕨
鬼薊言葉に起こす今更に
蕨狩り進みつつ沖見てしまふ
いつか見た子鬼を思ふ花苺
逃げぬ男逃げぬ女と蕨狩り


堀本 吟
穴出ると帰れと言われ長蛇の列
亀鳴くや甲骨文の堆く
太陽を浴び日本の黄金週間
見えぬものも共にいて耳すますグレイゾーン


竹岡一郎
かへれない全てのものへぶらんこを
蝶のゐる切岸までを耕せり
初夏は割腹しくじる度に増える臍
梅雨の人形髪伸び爪も歯も尖れ
失踪の半世紀後の川床に遇ふ
合金の義体にビキニあたし不死
弱き魂煮えたり鵺よ共に喰はん