2020年6月26日金曜日

令和二年 花鳥篇 第六(早瀬恵子・水岩 瞳・青木百舌鳥・網野月を)



早瀬恵子
ほっほ螢ハッピーホルモン追いかける
深窓の母はコロナの蚊帳の外
鉄線花まだ狂いたき坂の風
ストイックな分身虹の果てまでも
名歌とや新たまねぎを剥くあした


水岩 瞳
木屋町の橋桁集合花筏
自粛てふ謹慎のごと花は葉に
籠り居のままにつれづれ躑躅燃ゆ
草稿は草稿のまま風薫る
扇風機さげて居間きてテレワーク


青木百舌鳥
葛の芽ののぼりて草を締めきらず
十薬を摘みをる婆もマスクなる
蕗若葉広がりきつて日に垂るる
交番や蚊取線香の火を左右
田植機の矻矻と水押し分けて


網野月を
右利きの蛇に好かれる右巻貝
薄暑かな浦和太郎の妻花子
蝌蚪は蛙に二枚目の二枚舌
習いても天分の有無夏うぐいす
心って交わらないの花いちじく
捨てられぬものばかりなり父の日来
あなたの影はあなたではなし夏燈