2020年6月12日金曜日

令和二年 花鳥篇 第四(林雅樹・渡邉美保・ふけとしこ・望月士郎・木村オサム)



林雅樹(澤)
日溜りに鸚鵡の籠や啄木忌
イーゼルの向かうの裸女や春の鳥
街道の音はたと止む猫柳
鉱泉のぬるきに浸る若葉かな
葉桜や水澱みたる鶴見川


渡邉美保
森に降る雨のこまやか抱卵期
藤棚の下に来てゐる緊縛師
疫禍とや芭蕉玉巻く悲田院


ふけとしこ
ゆく春の箒にからむ鳥の羽
バス時刻表囀りに取り巻かれ
クリムトの零せし赤か罌粟ひらく
八十八夜蔓持つものは蔓で攻め


望月士郎
新社員みな人形を抱いて立つ
苗札とちがう花咲く丘の家
字余りのような顔つき毛虫焼く
影法師ひたひたと来るもぬけの夏
髪洗う空中ブランコが見える


木村オサム
あるのかい死者の側から見るさくら
あごひげを撫でる神々さくら散る
テーブルにピエロが一人花の昼
さくらさくら日本は詩人多き国
ひかり射す巣箱の中の大伽藍