2020年6月19日金曜日

令和二年 花鳥篇 第五(網野月を・前北かおる・井口時男・山本敏倖)



網野月を
こどもの日此処だったかな秘密基地
おとといはあれだ親父の誕生日
元カノの後ろ姿や夏きざす
夏めくやバッティングセンターの割引券
通販のドガのレプリカ花は葉に
睡蓮の鉢を沈める怒り肩
葉桜に未来というの来てしまい


前北かおる(夏潮)
物忌になぞらへて夜々おぼろなる
忌籠の日数のつもる春埃
応援の如くに布団叩く春


井口時男
歳時記に君の句ありと花あせび
八年経ぬ死にたればまたヒヤシンス
マスクして寡黙な春となりにけり
花盈ちて虚空波立つウイルス禍
空咳に小鬼さゞめく花明り
蝶落ちて鱗粉の街メイド服
さながらに陽光散華叫天子


山本 敏倖
菜の花に辿り着いたる我は誰
自撮りする背後は古代桜かな
さえずりの平行棒は変体仮名
殿様蛙古城のように身構える
火焔土器をふっと離れし烏揚羽