2020年7月3日金曜日

令和二年 花鳥篇 第七(真矢ひろみ・渕上信子・曾根 毅・のどか)



真矢ひろみ
花篝焚いて百鬼のしんがりに
亀鳴くやカーナビ座標北にずれ
ロボットの長い瞬き風光る
飛花に顔上げて軌跡は眼裏に
素数てふ割り切れぬ数おぼろの夜


渕上信子
涅槃図や遠近法が変
手のとどく鳥の巣のからつぽ
さくらんぼ未完のグッド・バイ
堂々と玄関から蜈蚣
犬は片足上げ小判草
ちまむちまむと尺蠖虫は
なつれうり器をかへただけ


曾根 毅
花冷の枕の端が縮むなり
花筏妻の匂いを潜めたる
花客なり別れのときは離岸めき


のどか
朱の紅は覚悟の色や晶子の忌
燃え上がる草矢の射ぬく処から
石楠花や懐妊を知る日の鼓動
軽鴨やモンローウォークの母を追ひ
雛罌粟や転校生は帰国子女