仙田洋子金魚藻のただよふのみのゆふべかな
葉桜の葉擦れに呪詛の紛れ込む
茅花流し空しらじらと明けてきし
シャンパングラス薔薇の花びらもてふさぐ
夕薄暑魚跳ね上がる高さかな
生ビールさびしさにまた乾杯す
七月十六日
仮幻忌のうすむらさきのゆふべかな
辻村麻乃ここにゐるここにゐるよとほたるとぶ
夕焼けて見知らぬ家族の会話かな
草いきれ疲れの出たる手を繋ぐ
家だけの故郷を捨て大夕焼
不具合の多き一日や凌霄花
浴槽の藻と広ごりて髪洗ふ
一人居やアイスコーヒーてぃんと鳴る
渕上信子夏来る人類皆マスク
スマホを濡らすあぢさゐの雨
火蛾掃くや恋の跡累々
夕合歓の花けむりのごとし
花氷褒め方ほめられて
出刃包丁を研げば郭公
嗚呼すてゝこのこんなをとこと
【花鳥篇 追補】
妹尾健太郎指で土落とすだけ野蒜すぐ齧る
目の目立つ面目のない落し角
ちょっとちくっとしますよ草餅
しゃがまねど微かに匂う春の土
海苔掻に崖あり一発波かぶり