2020年8月7日金曜日

令和二年 夏興帖 第一/花鳥篇 追補(仙田洋子・辻村麻乃・渕上信子・妹尾健太郎)



仙田洋子
金魚藻のただよふのみのゆふべかな
葉桜の葉擦れに呪詛の紛れ込む
茅花流し空しらじらと明けてきし
シャンパングラス薔薇の花びらもてふさぐ
夕薄暑魚跳ね上がる高さかな
生ビールさびしさにまた乾杯す
    七月十六日
仮幻忌のうすむらさきのゆふべかな


辻村麻乃
ここにゐるここにゐるよとほたるとぶ
夕焼けて見知らぬ家族の会話かな
草いきれ疲れの出たる手を繋ぐ
家だけの故郷を捨て大夕焼
不具合の多き一日や凌霄花
浴槽の藻と広ごりて髪洗ふ
一人居やアイスコーヒーてぃんと鳴る


渕上信子
夏来る人類皆マスク
スマホを濡らすあぢさゐの雨
火蛾掃くや恋の跡累々
夕合歓の花けむりのごとし
花氷褒め方ほめられて
出刃包丁を研げば郭公
嗚呼すてゝこのこんなをとこと


【花鳥篇 追補】
妹尾健太郎
指で土落とすだけ野蒜すぐ齧る
目の目立つ面目のない落し角
ちょっとちくっとしますよ草餅
しゃがまねど微かに匂う春の土
海苔掻に崖あり一発波かぶり