2020年8月28日金曜日

令和二年 夏興帖 第四(山本敏倖・夏木久・松下カロ・小沢麻結)



山本 敏倖
烏揚羽天の香具山越えて来る
こっくりさんと密談をする木下闇
箱庭の十三番地冠水す
陰影の無限大描く蔦青し
ピンヒール底の高さに積乱雲


夏木久
解禁の昨夜の夢は薔薇の棘
心臓のリズム乱して花は葉に
荒梅雨へ重機のアーム水の星
青梅雨へ白いカートがドアを出る
ぐるぐるの針金の先今日も雨
耳鳴りへ硝子の檸檬抛り込む
空蝉を覗き夜警は黙り込む


松下カロ
噴水のてつぺん眠る女の子
ハンカチに何か包んで大事さう
仰向けば疵うつくしき青りんご


小沢麻結
草茂る鉄条網は錆び歪み
半日を風に晒して蓮の花
水打つやシンシアの歌口ずさみ