2020年8月14日金曜日

令和二年 夏興帖 第二(青木百舌鳥・加藤知子・望月士郎)



青木百舌鳥
風ありて旱河原に靡くなし
明易し鶏卵おのづから光る
地の雨にずしりと太き茅の輪かな
みあかしに蜘蛛つたひをる糸見えず
灰釉のあをき溜りへ冷やつこ


加藤知子
晴子忌や捨てねばならぬお菓子箱
ぽうと立つ蓮の蕾よ食えないお嬢
なめくじらきょうの白地図黒く冷ゆ
馬の目の濡れて道連れ半夏生
血太りの藪蚊を叩く僥倖


望月士郎
蛍狩背中の黒子さわられる
眠れないさかさのさかな梅雨の月
転生のまずは一旦みずくらげ
手花火に黒いキリンがやってくる
哀しみと金魚掬いは鰓呼吸