2020年8月21日金曜日

令和二年 夏興帖 第三/花鳥篇 追補(神谷 波・杉山久子・曾根 毅・竹岡一郎・小沢麻結)



神谷 波
梅は黄熟なす術のなき病
合歓咲くや末期の涙拭いてやる
命終の頬撫でのうぜんの花落ちる
心なしか遺影に愁ひ百合香る


杉山久子
菩薩見て不動明王見てラムネ
耳朶に今宵くちなしほどの冷え
風音やキャンプ終ひのハーブティー


曾根 毅
花菖蒲脚の先から消えかかり
雨音か瀬音か我か五月闇
計算の片手間に蠅叩きけり


竹岡一郎
包丁に水噴く海鞘はさへづりたい
海鞘の殻剝く安けく滅びたい彼奴のも
わが死肉の部位は蛆に喰はせてわが行く
沢蟹の群踏まざれば進み得ず
息を吐くたび睡蓮のひらく音
咬み狂ふ赤蟻の巣は雨充つる
すつぽんに花街劫暑羽根みどろ


【花鳥篇】
小沢麻結
みづうみの眠れるままに公魚釣
縄文土器出土の在所桃の花
花過ぎの人来ぬ土曜見学会