神谷 波梅は黄熟なす術のなき病
合歓咲くや末期の涙拭いてやる
命終の頬撫でのうぜんの花落ちる
心なしか遺影に愁ひ百合香る
杉山久子菩薩見て不動明王見てラムネ
耳朶に今宵くちなしほどの冷え
風音やキャンプ終ひのハーブティー
曾根 毅花菖蒲脚の先から消えかかり
雨音か瀬音か我か五月闇
計算の片手間に蠅叩きけり
竹岡一郎包丁に水噴く海鞘はさへづりたい
海鞘の殻剝く安けく滅びたい彼奴のも
わが死肉の部位は蛆に喰はせてわが行く
沢蟹の群踏まざれば進み得ず
息を吐くたび睡蓮のひらく音
咬み狂ふ赤蟻の巣は雨充つる
すつぽんに花街劫暑羽根みどろ
【花鳥篇】
小沢麻結みづうみの眠れるままに公魚釣
縄文土器出土の在所桃の花
花過ぎの人来ぬ土曜見学会