小野裕三(海原・豆の木)蜘蛛の巣に架かる幽霊みな透明
礼拝も口づけもなき薄暑かな
自転車の荷台に置かれパイナップル
浜木綿やヒッチハイクの二人組
岬へと当てずっぽうの径灼ける
佐藤りえ水菓子に文添へてある映画かな
夏河にイルカの群れのやうな雲
猫のよぶこゑ 素手でさはつて良いものか
筑紫磐井夏座敷妻がまる見えだから不安
少女s(複数形)脱いで 蛾となったり 蝶となったり
君が飲む私の溶けたソーダ水
小野裕三(海原・豆の木)蜘蛛の巣に架かる幽霊みな透明
佐藤りえ水菓子に文添へてある映画かな
筑紫磐井夏座敷妻がまる見えだから不安
川嶋ぱんだ(樹色、つくえの部屋)水眼鏡してアクリルの向こう側
中村猛虎一畳に足りぬ棺桶道おしえ
松浦麗久(いつき組、樹色)夏空の青さに音符溶け出して
高橋美弥子(樹色)高速の朝空まぶし袋掛
姫子松一樹(青垣、関西俳句会「ふらここ」、樹色)レガースのひたと吸ひ付く夏の昼
菊池洋勝(樹色)ダンボールベッド組み立つ初夏の風
依光正樹大輪の花やしづかにものを書き
依光陽子晴子忌の切実に散る花びらよ
水岩 瞳廃校の足踏みオルガンアマリリス
のどか月下美人魔女と契約した証
下坂速穂蛸はいつより海に棲む壺に眠る
岬光世初夏や女庭師の道具入