2020年10月2日金曜日

令和二年 夏興帖 第九(水岩 瞳・のどか・下坂速穂・岬光世)



水岩 瞳
廃校の足踏みオルガンアマリリス
わたくしも並んでそよぐ夏木立
七夕竹終息の文字ここかしこ
捩花の選ぶ右巻き左巻き
混沌が混濁となる泉かな


のどか
月下美人魔女と契約した証
ミルク飲み人形にもと天花粉
前世での爵位隠してゐる飛蝗


下坂速穂
蛸はいつより海に棲む壺に眠る
其処な者毒消売か酒飲みか
蛸が壺出でゆくほどの月明り


岬光世
初夏や女庭師の道具入
内にある水音立てて葛桜
花束を簡単服の腕へ受く