夏木久檸檬転げる道なりの港町
透明になりゆく鳥を月光樹
踊り場を行き交う後遺症残り
ⅠCUの医者も患者も夜長へと
聞き漏らす釣瓶落しの深層考
闇を切り天の川原を走る人
然も然も地球は棺漂流す
加藤知子眠れずに眠る男へ花灯籠
星月夜に向けてエプロンをほどく
木をゆするうそ寒の芯つかむまで
望月士郎みずうみの空耳ミソラ秋澄むや
狗尾草母と哀しくくすぐりあう
キリン絶滅ガラスのビルに映る月
秋そっと自分の影を踏むあそび
霧の町やさしい象とすれちがう
岸本尚毅木の上に雲現れし良夜かな
山光るほどの良夜のほととぎす
銀漢に羽蟻もすこし飛ぶ夜かな
秋晴や草丈高き外来種
鬼蔦を引いて柿とる女かな
秋晴や駅の北口広々と
つながつて長き白波雁渡し
林雅樹(澤)劇終はり舞台に血糊秋の暮
新酒酌みコロナパーティーたけなはぞ
覚えとけよ月のない夜もあるからな
秋暑しバリウム呑んですぐげつぷ
ひつじ田に立小便をする男