2020年12月11日金曜日

令和二年 秋興帖 第六(青木百舌鳥・花尻万博・小林かんな・早瀬恵子・真矢ひろみ)



青木百舌鳥
山並を平たく越ゆる秋の雲
寺跡の芝に菌の輪をなせる
辛さんが中辛と云ふ唐辛子
風去つて芒の原のふくらめる
弦月や街の写真はタテで撮る


花尻万博
  秋
朝寒や光らぬ水を舐める猫
父母の眠りに鳴子一夜鳴る
木の国の時の流れも通草かな
胡桃割り人形疲れ波音聞く
渡る鳥みな見る形良きベレー帽
蟷螂に畳まれ何かがさがさす
吾子光る猪垣下りてまた上り


小林かんな
三日月の踵に艫綱のかかる
宇宙船酔い止めとして桃のグミ
月がきれいですねボンベに酸素足す
月面をみな後ずさる1ヤード
露草の咲く地球へと還りゆく


早瀬恵子
白膠木紅葉ぬるでもみじにバロックのシンフォニア
秋深しおばあさまからデジタル化
どこまでも金木犀の独断
木染月こそめづき母の目に咲く美容院
薄紅葉して抱きおこされる日の母よ


真矢ひろみ
川の字に臥すもの怖し秋の蚊帳
蚯蚓鳴く部長の目許震ふとき
触覚の先の光昏かまどむし
天高く火星地下湖に棲むものよ
身の奥のたまゆら碧く秋あはれ